江戸のキャッチコピー

江戸時代のキャッチコピーの紹介

はこいり歯磨き 漱石香

平賀源内

はこいり歯磨き 漱石香 せりふ口上

トウザイトウザイ、抑私住所の儀ハ八方ツ棟作り四方に四面の蔵を建んと存立たる甲斐もなく、段々の不仕合、商いの損相つづき渋団扇にあふぎたてられ跡へも参りがたし。

然所、去る方より何ぞ元手のいらぬ商売おもい付候やうにと御引立被下候はミがきの儀、今時の皆様ハ能御存の上なれハ、かくすハ野暮の至りなり、其穴を委く尋れバ防州砂にほひを入れ、人々のおもひ付にて名を替るばかりにて元来下直の品にて御坐候へども、畢竟袋を拵候の、板行をすり候の、あののもののにて手間代に引け候。

依之此度箱入に仕、世上の袋入の目方二十袋分一箱に入御つかひ勝手よろしく袋が落ちり楊枝がよごれると申候やうなへちまな事の無之様仕、かさでせしめる積にて少しばかり利を取下直に差上候。尤薬方の儀、私ハ文盲怠才にてなんにも不存候へども是も去ル御方より御差図にて、第一に歯を白くして口中をさハやかにしあしき臭をさり熱をさまし、其外の功能ハきかずとも害にならず又伝えられた其人もまるで馬鹿でもなく候へバ、よもや悪しくハあるまいとぞんじ、教の通薬種をゑらみ随分念入調合仕、ありやうハ銭がほしさの儘早々売出し申候。御つかひ被遊候て万一不宜候ハハ、だいなし御打やり遊バされ候ても、高の志れたる御損、私方ハ塵つもつて山とやらにて大に為に相成候。一度切にて御求め下されず候ても、御恨可申上様は無御坐候。

若又御意に入り、スハ能ハと御評判被遊被下候ハハ皆様御贔屓御取立にて段々繁昌仕、表店へ罷出て金看板を輝かせ今の難儀を昔語と御引立のほど隅からすみまでつらりつと奉希上候。其為の御断左様に、クハチクハチクハチ。