江戸のキャッチコピー

江戸時代のキャッチコピーの紹介

ぬいものや加兵衛 2

御旦那様方御贔屓ニ預かり商売相続仕候段難有仕合奉存候。

猶此度相改麁末ニ不仕御逗留中無益之御物入無之様実意を以て御宿仕、

精々相はたらき奉申上候間、何卒不相替御入宿之程偏奉願上候。以上

  

  ひかれつつほつれし袖もぬいものや

    宿にハかかるもののあらねど  京六角堂まへ

 

         御定宿     ぬいものや加兵衛

ぬい物屋加兵衛

口上

いせ宮川をわたり

中川原町ニ私方出みせ

御座候間、手代六兵へと

御たづ袮下され、京都へ

おくり荷物御用被仰付可被下候、

并て道中記さし上可申候。

以上     

京の宿六かくだうのまへ 

ぬい物屋加兵衛と御たずね被成候へバ

まぎれ無御座候。   ぬいものや加兵衛

 

一各様方之御贔屓ニ預り、先祖ながらく繁栄仕、

めうが至極ありがたき仕合ニ奉存候。

猶又此度何角相改諸事ねん入ていねいに仕候間、

不相替御入宿之程奉願上候。

近年道中筋又ハ京都入口ニて外宿女郎宿多出、いろいろと私方あしく申、

御気をまよハせ外宿すすめ候者御座候而何を申候共、

御かまひなく御入来奉願上候。

変態広告史より稟告

曩に三業会社設立之節は、止事無事情に罹り辞するに難く無余義社事取扱候より、

遂に引手茶屋との間に葛藤を生ぜしが、風浪漸く静りしは豈賀すべきの事ならずや。

然るに余波尚動揺して、自家元は送客をせぬとの茶屋申合のあるよし、

是こそ大変ヲヲ怖や懼しやと驚く筈なれど、

さはなくて晏然として営業の前日に変らず繁盛せるは、

茶屋の手引を労するなく、愛恵の花客は輻輳すればなり。

夫れ而巳ならず当時自家出稼之二十三名の住人達、

茶屋の申合を聞とひとしくその濫りに妾等の生活を妨るの甚しきを怨み、

此上は楼主も茶屋の口気に拘らず、只管花客の満足する事を謀り給へ、

妾等も又別に好手段の存するありとの勧誘を受け、

意味深所は知らねども其首唱に其き一ト思案を巡らせしに、

第一は花客の失費を減じ、第二は待遇を克するに不如べしと、

まづ自家にて割烹を始め、給仕の婦人数多を置、

目先を替へ京坂の風姿に倣ひ彼仲居如き一様之粧ひにて差出し諸事花客の御取なしを専らとし、

聊か不自由なからしめず、

又乍疎末も一寸通しの膳肴一二種を供せんとする事を工夫を定め、

是迄御来光の節とは更に模様を替、当九月一日より弥相始め候間、

何も御光臨の上便不便廉不廉は御探訪被下度右吹聴間不相替御受顧御来車の程奉希候。

 

明治八年十一月              新吉原江戸町一丁目

                     貸座敷渡世 金瓶大黒

銅見正札付 遊女大安売

御客様方益々御機嫌克被遊御座、恐悦至極に奉存候。

従而私見世之儀、以御蔭年来遊女屋渡世相続仕、

冥加至極難有仕合に奉存候。

然ル処、近年吉原町日増に不景気に相成候に付、

同渡世之者共、古市を新ら敷今様之手振に替、

新行風仕候所、枯木に花の郭内再繁昌仕候事、

偏にお客様方への取扱宜敷故と浦山敷、右に習ひ何をがなと思案仕候へ共、

私儀は小宅と申、花々敷工風とても無之、痛々心配仕候処、

御客様方之御遊之秘事と申者、彼一義に留り、

兎角閨中の御もてなしを安売に仕候偽、専一と存付候間、

別而御特用向之遊女共召抱、得と申付置、陰陽和合之儀は通例を三度と相極、

余分御まけ之義、繁々御来籠之上、遊女共御相対に被成下候様、

奉願上候上は、且御老人様方、又は御勢分銅ひよわゐ御客様抔は、

定例之通、為御行無之御方様は、御相方え遊女共より残り之分は切手に致し差上申候間、

其次に御はこび之節、右切手御持被遊候得ば、毛頭無相違御うめ合為致可申候間、

御客様方被仰合不限昼夜御賑々敷御光駕之程、奉希上候。

猶、御懇意様方江御風聴被下候様、是又偏に奉願上候。 以上

 

七月     新吉原角町入口

御意に入不申遊女、取替差出し申候。    松田屋家寿

藤岡屋日記より

口上

 

御披露のため鳥渡申上まゐらせ候。

日増に御暖に相成候得得共、旦那様方益御機嫌能入らせられ、

かずかず御めで度存じ奉り候。

左様に御屋敷へは私事是迄の通り引手茶や渡世致候処、

此度相改御客様方入らせられ下され候節は、遊女屋へ御供致し、

同所に召上られ御酒御壱人様に付、御出の都度都度壱升つつ差上、

御手軽の御遊び相成候様致候まま、此上共彼地へ入らせられ候節は、

皆々様仰合され、御光来成下され候様御頼申上まいらせ候。

尚御懇意様方えも御風聴のうへ御ひらぎの至、ひとへにひとへに御願申上参らせ候。

まづはあらあらめで度かしく。

 

三月 大音寺前西徳寺向         いせや鉄五郎

現金引手なし 遊女大安売

一、御客様方益御機嫌克被遊御座恐悦至極ニ奉存候。

随而私見世之儀、以御蔭年来遊女屋登世相続仕冥加至極難有仕合ニ奉存候。

然ル処近年、吉原町日増ニ不繁昌ニ相成申候。

其根元ト申者、遊女屋仲間人気甚悪敷相成、

廓内寛政度之儀定不相用自分勝手之渡世致、

客人送リ候茶屋江揚代金貮朱ニ付三百銅三百五拾銅亦者二ツ分ケ抔ト申引手銭差出し候故、新規茶屋、是迄ヨリ三百軒余も相増候得者、自然と御客様方江麁末之品差上候様ニ相成候ニ付、此度商内之仕法替仕、茶屋客人一切請不申、現金売正札付値段引下ケ御特用向遊女沢山仕入、御酒肴夜具等ニ至迄吟味仕差出し申候間、御客様方被仰合不限昼夜ニ御賑々敷御光来之程奉希上候。

猶御懇意様方江も御風聴被成下様偏ニ奉願候。以上。

一座敷持遊女 金壱歩之所銀拾貳匁

一部屋持遊女 金貳朱之所 銀六匁

一内芸者   金貮朱の所 銀六匁

但し御酒正宗御肴会席真似合

一御馴染御祝儀者御思召次第

一茶屋船宿送リ客一切請不申候

月日                    新吉原角町

 

御意ニ入不申遊女取替差出シ申候    万字屋 茂吉

 

乍憚口上

あら金の土一升に。

かね一升をつなきとし。

うそをまじへぬ本町へ。

新たにひらく私見勢ハ。

すぐな。

生蕎麦の柳より。

細き手際の。

手うちそば。

各様のおこころに。

少しもそむかず。

さからハず。

おうせになひくを第一に。

先初春は四方山に咲つらねたる花かつほ。

つばなの穂先ひき抜や。

夏ハ涼ミの。

船切。

重詰。

はでな浴衣の志ぼり汁。

秋は田毎の月にのミ。

夜をふかしたる。

蒸籠そば。

冬ハ取るわけ信濃なる。

雪にさらしな。

こころの悪技。

井戸にたたへし。

水道の水ハ。

方円の器を清め。

かまどに佇。

板まへの人ハ、善悪の手際をゑらみ。

時節ハ志かも。

文月や及バぬ筆の。

御披露ハ。

ひと反切の。

ちらし書めて度かしく。

の末長く御ひいき御評判之程奉希候。以上

 

賀松桂菴店開        坪平主人述

引抜新粉雪 塩梅薬味花

本町開店後 評判此茲家

 

御出をまつやちと勢の花の客

            栄ふおそばを住よしと忘て

 

文月明日より             本町弐丁目南側

                   松 桂 菴