江戸のキャッチコピー

江戸時代のキャッチコピーの紹介

御洗粉の説帖

店にて商ひまする。

御あらひこの功能といつは。

一包を糖弐合に御ませ常に御つかひ被成候ヘハ。

崑崙国の手習子か。煤掃にやとハれた弁慶か。炭団の化物かと。

うたがうほど色の黒き尉どのも。忽奇特あらハれて。

八朔の姝妓九段目の小波遼東の家こなやの鼠。

雪中の地蔵尊。蓋を明たる浦嶋が。七日とまたす立所に。

ぬれ手でつかむ粟津が原。

 

彼実盛が鬢のごとく。

白くなる事奇妙にて。

深山鳥が鷺となし。

向の胡麻の黒きさへ。

むかふの鶴の白さに変じ。

志ゆす。

ひ志ゆす。

志ゆちん。

どんす。

きんらん。

さや。

ちりめん。

もめん。

其外志ミ物にも。

このあらひこを御用ひなされハ。

知識にあふた狐つき。

良医を得たる童ハ疫。

さつはりとおちる事。

上手の話すはなしのことく昔々も例あるお婆婆ハ川へせんたくにも此洗粉の沙汰をきく。

流れてきたる桃のことく。

最一ッくやれと買にくる。

身仕廻部屋の噂にも。此あらひこの評判つよく。

髪洗日にさだまりし。

月の廿七日にハ姝妓がたのお手にもふれ。

疥。

飼酉。

疣。

黒痣も志ぜんとなくなりむきたての。

卵のことくつやを出し。

無塩も即西施となり。

夜鷹も即ち高尾と見へ。

 

茶屋ハむかひに閨の戸を。

あくるわびしきかつらきの。

髪の毛のちぢれしまで。

そののひる事大晦日のそばのことしされバ合羽の大仏さまも白毫の銅盥にて。

清めの御手水なさるる節ハ。

 

紅葉袋にませ玉ひ。

品川そたちの浅くわきつて。

御風聴あそばされ。

門前にいちの権現霊宝の網のめから。

手をたすことなく大ばやり是と申も御得意方の御とりたてゆへ御影ゆへ。

此うへとてもお見すてなく御ひひき大人おおはんぜう仕候様相かわらす。

八わたのかねのひびきに応じ掘出し物と御評判よろしく奉希上候。